日本語学校 参与観察の備忘録

実態を社会学的にみてみよう。

学生の留学目的

日本語レベルが低く自己表現ができないこと、先生という相手に本音は言えないなどの条件があることから、学生の留学目的のなかなか詳細を掴めなかった。しかし日々の授業やアルバイトや生活指導をすることにより、少しずつ見えてくるようになった。

まず、彼らは貯金して母国で家を建てたいのだ。そして適度な学歴がほしい。この比重は学生によって違う。あくまでも主観であるが、20歳前後の学生は特に概ねこうした夢を強く抱いている。20代後半であれば母国で就業経験もあるので、生活費を稼ぎながら仕事で日本語ができるようになりたいと考えているようだ。

国籍ではミャンマーベトナムの学生がお金を稼ごうとする意識が強い。ネパールは偏りがなく多様な意識が混在する。スリランカはキャリア意識が強い。ミャンマーは特に見境なくお金を稼ごうとする学生が多く、それは日本語のレベル関係なく多いように見受けられる。ベトナムの場合は、ある程度仕事を選びながら確実に金稼ぎをしようとしている。

経験の長い専任講師によると、ミャンマーが一番厄介ということであった。ミャンマーの場合、アルバイトの掛け持ちは当たり前であり、一つしか仕事がないと、自分だけ取り残されている心境に陥るという。

お金稼ぎが最優先の学生は暇がほんの少しでもあればアルバイトをしようとする。シフトが入らないなら掛け持ちする。そして送金をする。

専門学校に行けば更に学歴が付きながら、その頃には日本語もある程度できるので過酷労働なしにアルバイトができる。専門学校を卒業する頃には母国で家が建つほどになっている。

もしかすると、日本への留学、すなわち日本語学校からの専門学校進学は、彼らのビックドリームを叶えるものなのかもしれない。

巷で言う留学生の労働者扱いは、彼らの視点から言うと、夢を叶えるためのステップにしか過ぎないのかもしれない。