日本語学校 参与観察の備忘録

実態を社会学的にみてみよう。

つかぬまの休み

専任講師の有休消化が始まった。一年で一度のチャンスである。皆、病院に行ったり、土日やお盆休みと付けて連休を取る。連休の休みの取り方を聞くと、ゆっくり過ごす、海外旅行へ行く、ミュージカルを観に行く、実家へ帰る等、一般的な意見とかわりない。 た…

日本語ができない留学生の銀行口座開設

日本語が殆どできない留学生が新規に入国したときに一番大変なのは銀行で口座を開設することである。まず銀行は、日本語が話せない外国人の口座開設を認めない。理由は犯罪を防ぐためである。日本語が話せない外国人が日本語ができる外国人や日本人が同伴し…

夏休みの専任講師の仕事

夏休みに入っても専任講師の仕事は減らない。正規の授業が無い時間代わりに普段できないことをしている。例えば、教材関係の電子化や生活指導に関する教材の作成等がある。その他、夏休みに入ってもやってくる学生や事故の対応、そして新入生のアルバイトの…

日本語教師が働く学校を選ぶ時勢

日本語教師が足りていない。入学する留学生の数は激増しているのに専任講師が全く足りていない。そのため、専任講師が日に日に疲弊していく。そうした様子を見て、非常勤講師や専任に興味のある志願者が、益々専任講師になろうとしなくなる。日本語学校側が…

死亡にかかる費用の負担

留学生が死亡した場合、誰が葬儀や火葬費用を負担するのだろうか。特に途上国から来た国の場合、両親が学生の入院費や葬儀費用を支払えない場合もある。 日本語学校の場合、経営者の意思にもよるが、その費用は学校が負担する。危篤状態になった時、親族に貯…

留学生の死亡防止のために

留学生が日本に滞在中、様々なトラブルに巻き込まれる。その中で一番最悪のケースは亡くなることだ。 亡くなる理由は、事故に遭うケース、病気のケース、自殺のケースがある。多くの留学生を受け入れる教育機関では、こうしたケースに対応したことがあるであ…

夏休みの前の生活指導

日本語学校では一カ月に一度、生活指導が行われている。 生活指導では、その都度に応じた生活に関わる注意喚起が行われる。5月は入学に関わる事項、6月は雨に関する注意喚起が行われる。夏休み前の7月は夏休みの過ごし方や海やプール、出国に関する事項が…

『みんなの日本語』の基本 三種の神器

これは初期過ぎるが故に、初心者がそれすら分からないことを自分自身が忘れてしまわぬための備忘録である。まず、『みんなの日本語』の教科書を使って初級者に教える場合、本冊と翻訳本と教え方の手引きが三種の神器となる。本冊を使って教えることになるが…

4月入学者と7月入学者の違い

日本語学校では留学生の入学が複数回ある。今月は7月入学生が続々と入国しており、入国後の手続きやオリエンテーションを受けている。ある日、4月に入学した留学生と7月に入学した留学生が同じ教室でテストを受けることになったのだが、その教室の中にいる光…

ベトナム、ネパール、スリランカの「かっこいい」

ベトナム、ネパール、スリランカの男子学生では「かっこいい」に対する意識が異なるようだ。 ベトナムの男子学生の場合、言葉を選ばずに述べるなら、チンピラのようなイメージを持っている。髪の毛は金髪や金に近い色で染め、ネックレスは大ぶり、歩くときは…

事務局vs日本語教師(教務)

大学において事務と教員ではどちらに主導権があるのかと言えば教員である。国立であれば学長は教員から選ばれるし、意思決定を行う会議は教員が主体で行なわれる。また、大学の事務職は、事務局と教務の2つに分かれている。事務局は職員の人事や大学の財務…

留学生の寮からの旅立ち

4月に入学した留学生は最初の半年間、寮に住むことができる。家賃は光熱費を込みでの破格の値段である。寮は4人での共同部屋であるため、他の国の留学生と共同生活となる。こうした他国の学生との共同生活や初めて日本で住む事にトラブルは多い。例えば、寮…

席替えと異文化交流

夏休みを目前に、非常勤の先生からの熱い要望により席替えを決行することとなった。理由は、仲のいい学生同士がおしゃべりをしてうるさい、そのクレームが他の学生からもきている、リスニングの時ですら話しているという内容であった。日本語学校では複数の…

プレスメントテスト直前のクラス別学生態度

来日して直ぐにプレスメントテストを行い日本語能力毎にクラスを分ける。そして、一学期を過ぎたら、再度プレスメントテストを行いクラスを分ける。この再度クラスを分けるプレスメントテストに対する態度がクラスによって異なる。 1番上のクラスは、テスト…

体調を崩したり事故に遭う学生

体調を崩したり、事故やアクシデントに遭う学生が後を絶たない。体調を崩し校内で倒れ救急車で運ばれる学生、寮で気を失う学生、車と接触事故を起こす学生、財布を無くす学生、アルバイト先で怪我をする学生。それ以外にも体調不良を訴える学生が多くいる。…

夏休みとアルバイト

留学生のアルバイトの時間は1週間に28時間という時間数は有名であるが、夏休みになると週40時間まで認められていることは案外知られていない。 1週間に40時間といえば、1日8時間勤務を週5日する事になる。すなわち、一般的な勤務形態と変わらない。 夏休みを…

留学ビザが下り過ぎている件

今年は明らかにビザ発行許可が緩い。日本語学校側はある程度の不許可を見越して申請を出しているのにほぼ通っている。その為、日本語学校側も大慌てである。オリンピック前の日本語人材の育成なのか、留学生20万人計画の達成に向けてラストスパートにかかっ…

クラス別「ワンワン」への反応

犬の鳴き声が「ワンワン」であることに対するクラス別の反応。 上級クラス、 「えっ、ワンワンですか?犬はワンワンと言いません。」 おわり 中級クラス、 犬の鳴き声マネ合戦。誰が上手いか競い合う。その後、 学生「先生!私は先生のうちの犬になりたいで…

非常勤講師のエントリーショック

急遽、新しい非常勤講師がやってきた。日本語学校で働くのは初めてという。初級クラスに入ったその非常勤の先生は帰ってくるなり、副主任にこう言った。学生は赤ペンも持っていない、なんなんですか⁉︎せめて赤ペンくらい待たせて下さい、学校側で買ったらど…

授業中の携帯電話の回収

日本語学校では授業中に留学生の携帯電話を回収する。日本語学校では、とても当たり前で当然の行為である。集め方は様々で専門講師が決めたり、それぞれの教師に集め方を任せたりしている。主な集め方は、教師がカゴを用意し学生がそのカゴに携帯電話を入れ…

地元の商店街と留学生

学校の側にある商店街を散策する。商店街は随分昔からあるもので、その地域の観光地のような紹介をされることもある。しかし、現在ではシャッターが閉まっている店も多い。商店街の組合に話を聞いたところ、商店街は近くの日本語学校の留学生で活気づいてい…

アルバイト先の会社と日本語教師

留学生がアルバイト先でしでかす不祥事の怒りの矛先は、日本語学校に向かう。日本語学校では、履歴書の書き方をはじめ、アルバイトに関する姿勢や態度、法律としてのルールなどの内容をオリエンテーション等を実施する。そしてアルバイト先を学校の掲示板に…

経営学の視点と社会学の視点の狭間

留学生が程々に日本語を勉強し、程々の専門学校に行き、単純労働のアルバイトである程度お金を稼いだら帰国する。 経営学的視点から言えば、日本の技術も盗まれない、労働力不足を補い、税金も払ってくれる、そして留学中は日本国内で様々な消費をしてくれる…

学生のやる気を引き出す方法

授業に集中する学生と集中せず堕落していく学生の違いは何だろうか。1つには勉強する目的が明確かどうかであろう。専門学校に行きたいです、大学に行きたいです、ではなく、どこの専門学校や大学で何を勉強したいのか、そのためにどの程度の日本語力が必要…

バタバタと倒れていく専任講師

新入生の担任は学生指導、二年生の担任はビザ更新や進学指導で、蒸し暑い日々の中で、その他のトラブル対応もするため、4月からの疲れがマックスになる。二年生の先生は突然倒れて授業ができなくなったり、朝の授業が始まっても出勤しなかったりする。そして…

教師の教え方と学生の態度

教師の対応によって学生の学習態度も変わると以前書いたが、その仮説が本当なら、学生のキャリア形成にも影響があるだろう。 一流塾の講師が存在するように、もしかすると日本語教師にも一流の講師がいるかもしれない。 あくまで主観だが、日本語学習を長期…

客観視できなくとき 参与観察の危うさ

個人的な趣向として、観察の立ち位置はなるべく距離を保ちたい。客観的記述をしたいと日々心がけている。しかし、日々職場にいるといつの間にか当事者になってしまう。そして、見え方も価値意識も自分がそのコミュニティで社会化することにより、見えていた…

専任講師か非常勤講師か働き方の選択

日本語学校で日本語教師としての働き方は2つある。専任講師と非常勤講師である。専任講師はいわゆる正社員であり、非常勤講師は一コマいくらの計算での雇用形態である。正社員と時間給の雇用形態であれば一般的には正社員の方がいろんな意味で優位であると…

留学生同士の喧嘩

日本語学校はまるで日本の中学校や高校のような仕組みである。授業が始まる りと終わりは日直が「起立、礼、着席」の挨拶をする。そして授業が終わると日直が教室を掃除する。授業にはミニテストもあれば宿題の提出もある。高校の授業と同じである。中学校や…

日本語学校の種類について

一口に日本語学校と言っても、教育目的によって様々である。 まず1つは、本当の意味での語学学校がある。英会話スクールと同じと考えて良いだろう。ちょっとした短期留学や日本人と国際結婚して生活に必要になった人が通っている。 そして、日本の大学や専…